身長170㎝でもあきらめざるを得なかったプロへの道


この記事を書いたのは「JUNIOR SOCCER NEWS」編集長 水下真紀さんです。

現在、Jリーグでは150㎝台中盤の選手から190㎝台の選手まで、身長差が実に40㎝の選手たちが活躍しています。しかし、それだけを見て「身長が低くてもても、プロのサッカー選手になれる」というのは早計なようです。

身長170㎝でもあきらめざるを得なかったプロへの道

編集長
今回、お話を聞かせてくれたのは、株式会社サンプラスのスタッフ陽田さんです。陽田さんよろしくお願いいたします。
陽田
こちらこそよろしくお願いします。
編集長
ズバリ、身長が低いとサッカーの何が不利ですか?
陽田
すべてが不利です。

特にジュニアやユース世代では、空中戦はもちろんのこと、年代が上のカテゴリーに飛び級しても、スピードやパワーで負けてしまう選手もいます。

強豪チームには必ずと言っていいほど、大人顔負けの体格をした選手がいたりしませんか?
県トレセンなどを見てもらえればわかると思いますが、トレセンで選ばれるにはまず選手として『目立つ』ということが大事。

では、選手としてどこで目立つか?ですが…

大柄な選手は“デカイ”だけで目立つ。

しかし、小柄な選手はテクニックかスピードで目立つしかなくなります。もちろん、身長が低くてもプロで活躍している選手もいます。

でも技術やセンス以前に「身体の大きさ」でふるい落とされてしまう選手が、数え切れないほどいることも事実です。身長はサッカーだけでなく、ほぼすべてのスポーツにおいて大事なファクター(要素)と言えます。」

身長でサッカー選手の道を絶たれることもある

陽田さんは高校時代をJリーグの下部組織で過ごしました。年代を飛び級して1,2学年上の大会や、サテライトの練習にも参加していた、いわばもうTOPチームに上がることが約束されていたような選手です。

ところが陽田さんの身長の伸びは、高校2年生ほどで止まってしまいます。高校3年生の9月、陽田さんはチームのフロントから「今年は即戦力になる選手だけを取る。君にトップチームへの昇格はない」と通告されます。

「180cm以上あるか、とびぬけて(足が)速いか」が判断基準だという説明でした。

陽田さんの身長は170cm。現在は、「トータルアップ」というサプリメントの開発及び販売に携わっています。低いといっても、170㎝といえば、成人男性の平均身長よりもほんの少し低い程度です(平均171.49㎝)。

それなのに、サッカーの世界では「小さい」といいます。サッカーの世界の「身長」とは、どのような意味を持つのか?

年代別日本代表の平均身長は「全国平均+6㎝」

青線は年代別日本代表の平均身長、赤線は日本人男性の平均身長を表しています。
※ジュニアサッカーNEWS作成:以下、参照元

中学生までの平均身長は日本人の平均身長(参照サイト:NOBIKEN)
高校生までの平均身長は学校保健統計調査・運動能力調査(参照サイト:文部科学省)
日本代表の平均身長はこちら(参照サイト;日本サッカー協会)

若い年代から、 平均身長よりかなり高めの水準で推移しているのがお分かりいただけると思います。GKについては、U-15の時代からすでに平均180㎝を越えているほどです。

身長が低いのは本当に不利か?

身長が低い選手は、高い選手に比べて筋肉量と瞬発的パワーが劣るという調査結果があります。

身長が低いということが必ずしも絶対的なハンデにはなりませんし、身長が低くても活躍している選手はいます。けれども、一般論として調査した場合、

・ダッシュ等の力
・脚を曲げ伸ばしする筋力
・全身の筋力

において「身長の高い選手のほうが有利である」という結果が出ています。

背の低い選手は体格で勝負できない分、他の要素で大きい選手以上の結果を出さなければなりません。

当然、同レベルの技術であれば、体格の良い選手のほうが優先されるでしょう。これはサッカーに限ったことではなく、様々なスポーツにおいて共通すると思いますが「身長は低いよりも高いほうがスポーツ選手として有利である」といえるのではないでしょうか。

日本のサッカー選手の除脂肪体重と筋断面積ーU13からプロまでの年齢変化(参照:東海保健体育科学31 2009年)
1999年度報告「ジュニアユースサッカー選手(中学3年生)の体力特性ー等速性脚筋力と最大無酸素性パワーを中心にー」(参照サイト:三重県学校ネットワーク」

「身長は遺伝する」は都市伝説?


実は、身長は遺伝的要因で推測することはできません。

身長の遺伝率は約3割程度で、あとの7割は環境因子が占める、という考え方もあります(1)。
平成13年に生まれた子どもを対象として、現在も行われている調査があります(2)。

身長はその子の持っている遺伝子的要因と後天的な栄養と環境によって定まるのですが、実は、身長における遺伝的要因は私たちが思っているよりも少ないのです。

(1)ヒトの身長・体重における親子相関(参照サイト:城西大学 小須田和彦)
(2)子供の成長パターン:21世紀出生児縦断調査に基づく測定(参照pdf:一橋大学 北村行伸)

現在も遺伝に対する研究は進んでいますが、背の高い父と背の低い母の間に生まれた子が
・背が低くなる
・背が高くなる
・中間
とはっきりと分かれるわけではないことも指摘されています。

つまり、身長は遺伝だと思っていると、思いもよらないところで「遺伝のわりに背が伸びない」という事態が起きてしまう可能性があるということなのです。

身長は18歳までが伸びるピーク

陽田さんは小学校からずっと、身長はクラスの真ん中よりも後ろにいたそうですが「自分の身長はもう伸びない」と感じたのは高校2年生の時だったといいます。

中学1,2年生の時は160㎝台だった彼が、どうして170㎝で止まってしまったのでしょう…?

一般的に体の全体的な成長は18歳前後でピークを迎えるので、この時期は、 成長するのに必要な「成長ホルモン」を正常に分泌するための栄養素を補ってあげることが大切になってきます。
参考文献:子供の成長パターン21世紀出生児縦断調査に基づく測定(参照pdf:一橋大学 北村行伸)

成長ホルモンを促進する栄養素


成長ホルモンの分泌には、タンパク質が関わってきます。タンパク質は消化・分解されて「アミノ酸」の形になって吸収されます。

アミノ酸は体内でも合成することができますが、人体を構成しているアミノ酸のうち、合成できないものが9種類あります。その9種類は食事から摂るしか方法がありません。

さらに、アミノ酸には大きな特徴があり、それは「一番少ない量のアミノ酸の分しか働かない」ということです(ドベネックの桶理論による)。ほかのアミノ酸が100%摂取できていたとしても、残り1種類のアミノ酸が10%しか摂取できていない場合は、アミノ酸のすべてが10%しか働いてくれません。

成長ホルモンを正常に分泌させるためには、成長ホルモンと一番関係の深いアミノ酸が働けるよう、他のアミノ酸もできるだけ多種類を十分に摂取する必要があるのです。

ドべネックの桶理論についてはこちら:リービッヒの最小律とドべネックの桶(参照pdf:BSI生物科学研究所)

成長ホルモンにはアルギニンとオルチニン


成長ホルモン濃度を一番上昇させるアミノ酸としてアルギニンが有名ですが、そのアルギニンが働けるように他のアミノ酸も十分に摂取する必要があるのです。

また、睡眠中に成長ホルモンの分泌に働きかけてくれる非必須アミノ酸がオルチニンです。成長ホルモンは、運動後や、睡眠中に多く分泌されます。

骨の代謝をつかさどる成長ホルモンがちゃんと分泌されてこそ、骨が伸びること、ひいては身長が伸びることになります。
→身長と骨の成長について詳しくはこちら

背を伸ばすのに必要な3つのこと

・良質の睡眠
成長ホルモンは入眠後に出ます。夜22時から翌朝2時までが一番出るといわれています。その時間帯も含め、十分な睡眠をとることが絶対条件です。

・栄養バランスの取れた食事
成長ホルモンや、骨を伸ばし筋肉を成長させるアミノ酸は、体の中だけで合成することはできません。栄養バランスの取れた食事も大事です。

・足りない分の栄養補給
より効果的に摂取した栄養素が働くためには、足りない部分の栄養を補ってあげることが必要です。

これら3つの条件がそろって初めて、身長に働きかけることができます。

もちろん、適度な運動というファクターも必須になってくるので、アミノ酸サプリメント「トータルアップ」の販売元では、生活面も含めたメールや電話でのアドバイスを適宜行っているそうです。

最後に

画像参照元:毎日新聞

「フィジカルがあれば、日本は世界で戦える」という言葉の裏付けを探すために、リオオリンピックで銀メダルに輝いた100m×4リレー(陸上競技)の4選手の平均身長を調べてみました。

実に178.75㎝。

日本人の平均身長から7㎝も高い4人の力で銀メダルを手にしたのです。

もちろん、スポーツは身長がすべてではありません。センス、テクニック、メンタル、そういうものすべてを含むのはもちろんです。ただ、陽田さんの言っていた「3cmのマイナスは3cm分のハンデ。けれど、5㎝のプラスは武器になる」という言葉も真実であると思います。

これから様々なことにチャレンジする子どもたちの将来のために、色々と試してみる価値はあるんだなぁ、と感じました。

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